調査現場で「焦り」は最大の敵
調査の現場で私が常に意識していること、それは「焦らないこと」です。
どれだけ経験を積んでいても、対象者の突発的な行動や、予期せぬ状況に直面したとき、焦りが判断を狂わせる原因になります。
例えば、対象者がいきなりタクシーに乗ったとします。
その場にいる調査員は、次の行動を一瞬で決めなければなりません。
無理に追おうとすれば気づかれるかもしれない。
かといって、追わなければ決定的な証拠を逃すかもしれない。
そんな葛藤の中で、“冷静に判断する力”が求められます。
焦ると、視野が狭くなります。
周囲の状況や他の調査員との連携を忘れて、自分の感情や判断に任せて動いてしまう。
それでは調査はうまくいきません。
私は必ず、現場に入る前に「最悪のケース」をシミュレーションします。
もし見失ったらどう動くか、もし振り返られたらどうするか。
その備えがあるだけで、現場での精神的な余裕がまったく違ってきます。
ある現場で、対象者が突然商業施設の中に入り、出入口が複数ある場所をウロウロし始めたことがありました。
一歩間違えば見失う危険がありましたが、私はあえて距離を取り、他の出入り口を押さえていた別の調査員と連携して動くことを選びました。
その判断が功を奏し、対象者の動きを正確に追尾することができました。
焦らないというのは、すなわち“自分を信じる”ということでもあります。
準備してきたこと、積み重ねてきた経験、それらを信じて、どんな状況でも落ち着いて対処する。
その心構えが、成功率を大きく左右します。
もちろん、現場では緊張もしますし、緊迫した空気に包まれることもあります。
けれど、その中で「静かな集中力」を保てるかどうか。
それが、プロとアマの差なのだと私は感じています。
調査員にとって、最大の敵は対象者ではなく「焦り」です。
それに飲まれず、状況を俯瞰し、最適な選択を取り続けること。
それが、調査を成功に導く鍵であり、依頼者の信頼に応えるという使命の一部だと思っています。
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