子育てと夫の変化、静かなSOSに気づいた日
皆さん、こんにちは。
相談員のMです。
「子どもが生まれてから、夫の態度が変わった気がするんです」
そうお話ししてくれたのは、まだ赤ちゃんを抱えたまま来所された30代の女性でした。
育児の大変さと日々向き合いながら、ふとした瞬間に感じる“心の距離”が、日に日に広がっていく感覚。
ご主人は育児には協力的で、外から見ると「理想の家庭」と言われることも多かったそうです。
けれども、彼女の中には拭えない違和感がありました。
育児用品のレシートが増える一方で、帰宅が妙に遅くなる日が増えたり、スマホを持ち歩く時間が長くなったり——
日常の中の些細な変化が、不安の火種になっていたのです。
私は「もしかすると、育児の忙しさから来る一時的なすれ違いかもしれませんよ」とお話ししました。
しかし、彼女は静かに首を振り、「何かがおかしいという直感があるんです」とはっきり言われました。
数日後、調査を実施した結果、ご主人が仕事帰りに女性と会っている場面が複数回確認されました。
ラブホテルの利用や、プレゼントを渡す様子も記録されており、ただの“相談相手”では済まされない関係が明らかとなりました。
報告書をお渡しした際、彼女はじっと目を通した後、しばらく沈黙していました。
そしてぽつりと、「やっぱり自分が感じた違和感はは間違ってなかった」と言われました。
その言葉には、悲しみと同時に、母として妻として、何かを受け止めようとする強さがにじんでいました。
私たち相談員の役割は、調査結果を伝えるだけではありません。
その先の人生をどう歩むか、一緒に整理する時間を共有することだと思っています。
今回のご相談でも、彼女はすぐに離婚という選択をせず、まずはご主人と向き合う時間を持つことを決めました。
「赤ちゃんのためにも、自分のためにも、ちゃんと向き合いたいと思います」
その姿勢はとても静かで、しかし確かな決意に満ちていました。
夫婦の変化は、子育ての中で見えにくくなることもあります。
でも、ふとした“違和感”こそが、真実のひとかけらなのかもしれません。
そのひとかけらを拾うお手伝いができたなら、私たち相談員としてこれ以上の喜びはありません。
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