「話せる場があること」に安心された日
皆さん、こんにちは。
相談員のMです。
「すみません、うまく話せないかもしれません、整理できなくて」
そう言って面談室に入ってこられた女性の姿が、今でも印象に残っています。
声は小さく、表情も硬く、不安と緊張が全身から伝わってきました。
最初の10分ほどは、こちらからは質問や確認はせず、彼女の話したい様に、話してもらいました。
時系列や順番は気にせず、ただ一緒にお茶を飲みながら、心の中のものを出してもらいました。
私は「しっかり伝わる様に話さなきゃ」と無理をさせないよう、できるだけ自然な流れを大切にしました。
やがて、彼女が少し落ち着き、話すことがなくなってきたタイミングで、「いつくらいから、旦那さんの様子がおかしいと感じたんですか?」と尋ねました。
彼女の口からと、「夫の様子が変わったのは、半年前くらいからです」と落ち着いた言葉がこぼれました。
それが、彼女にとって初めて“誰かに話した”瞬間だったのです。
そこからは、止まっていた感情が動き出すように、涙とともに言葉があふれていきました。
「誰にも話せなかった」「責められると思ってた」「自分が弱いんだと思っていた」
そんな言葉の一つひとつに、私はただ「それは自然な感情ですよ」とお返ししました。
否定せず、寄り添うだけで、人は少しずつ心の重さを下ろせるのだと感じます。
調査を実施した結果、ご主人の不貞行為は確認されました。
ご本人は動揺しながらも、「やっぱり、向き合わなきゃいけないと思ってた」と前向きに受け止めておられました。
そして、「しっかり話を聞いていただいたこの場所があったから、ここまで来れました」と言ってくださったのです。
私たちは、調査だけでなく、“話せる場”を提供しているのだと、この時強く実感しました。
事実を明らかにすることも大切ですが、その前に「話せる相手がいる」と感じてもらえるかどうかが、最も重要だと私は思っています。
多くの方が、「誰かに話す」ことをためらい、不安の中で一人きりで悩みを抱えています。
でも、ほんの一言でも口に出せたとき、その人はもう少しだけ前を向けるのです。
「話せる場所がある」
その安心が、調査結果よりも先に、依頼者の力になることがある。
そう信じて、私は今日も皆さんのお話を聴かせていただいてます。
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