「証拠にならない瞬間」も記録する理由
皆さんこんにちは。調査員Oです。
調査において「決定的な証拠を押さえる」ことはもちろん重要です。
しかし、私たちが現場で意識しているのは、それだけではありません。
証拠にならない時間——つまり「何も起きなかった時間」も、実は大切な情報なのです。
例えば、対象者が毎週同じ曜日の夜に外出しているという情報があり、調査を行ったとします。
その夜、何の異性との接触もなく、まっすぐ帰宅したとしましょう。
一見すると“成果なし”に見えるかもしれません。
しかしその行動記録も、後の比較検討や分析において極めて重要な材料になります。
ある調査では、4回の調査のうち最初の3回がまったく動きのない日でした。
しかし、対象者の“動かない日”を把握できていたことで、4回目に不自然な動きを見せた瞬間を即座に察知し、尾行と撮影に成功しました。
また、何も起きなかった時間帯を記録しておくことで、「特定の曜日だけ外出する」「同じルートを避けて通る」といった対象者の習慣や癖が浮かび上がってきます。
これにより、調査の精度を上げたり、次回の調査計画を立てる際の貴重な判断材料になります。
依頼者から「結局、何もなかったんですね」と言われたとき、私たちは「何もなかったこと」を証明する価値について丁寧にご説明します。
証拠がなければ不安が消えるわけではありません。
だからこそ、「見張っていたが問題となる行動は一切なかった」と客観的に伝えられる記録が、依頼者の安心につながるのです。
さらに、報告書には「証拠写真」だけでなく、「行動経過記録」も記載します。
例えば「◯時:勤務先から退勤、◯時10分:駅方面へ移動、◯時35分:自宅マンションに到着、以後外出なし」といった詳細が、証拠と同じくらい重要視されます。
探偵の仕事は、派手な場面を撮るだけではなく、「何も起きない日常」を丁寧に見つめることでもあります。
むしろそこにこそ、対象者の行動パターンや本質がにじみ出るのです。
証拠にならない“静かな時間”をどう記録し、どう伝えるか。
その積み重ねが、最終的に依頼者の納得と信頼につながると、私は考えています。
前の記事へ
« 「この相談、場違いでしょうか?」と聞かれて次の記事へ
調査中に「撮らない判断」をする瞬間 »