対象者が“何もしていない日”の意味
皆さんこんにちは。調査員のOです。
調査をしていると、時には「対象者にまったく動きがない日」があります。
一日を通して自宅にとどまり、誰にも会わず、連絡も取らない。
このような日は、依頼者にとっては「何の成果もなかった」と感じられるかもしれません。
しかし、私たち調査員の視点では、「何もしていない日」にこそ価値があると考えています。
例えば、特定の曜日に必ず外出していた対象者が、ある週だけ急に行動を変えたとします。
それは予定が変更になったのか、それとも監視を察知しての行動制限なのか。
理由を一概に断定はできませんが、こうした変化を記録することが次の判断材料になります。
また、「動きがなかった日」を重ねていくと、逆に「動きがあった日」がより際立ちます。
ある調査では、週に4日は在宅、残りの3日は決まって同じ時刻に外出していた対象者がいました。
その外出パターンを把握していたことで、不貞行為が行われたタイミングを正確に押さえることができました。
依頼者から「今日は何もなかったんですね」と言われた時、私は必ず「その“何もなかった”ことにも意味があります」とお伝えします。
調査は“点”ではなく“線”で見るべきもの。
一つひとつの情報がつながったとき、行動のクセや相手との接触リズムが明らかになるのです。
張り込みの現場でも、私たちは常に警戒を緩めません。
対象者が一見“家にいるだけ”に見えても、窓の動きや車の位置、カーテンの開閉時間など、細かく観察を続けています。
これらの情報が、行動予測や証拠収集の判断に役立つのです。
調査とは、必ずしも毎回劇的な結果が出るものではありません。
むしろ、地味で静かな記録の積み重ねが、最終的に依頼者の安心につながるのだと私は信じています。
一日動きがなかった――
それは、次の一手を冷静に見極めるための、貴重なヒントでもあるのです。
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