調査は「演技」と「冷静さ」の両立
探偵の仕事は、意外と「演技力」が必要です。
ただし、それは“騙すため”ではなく、“目立たないため”の演技です。
そして同時に、どんな状況でも冷静に判断する力も求められます。
この「演技」と「冷静さ」の両立こそ、現場で調査員が常に意識していることです。
例えば、張り込み中に対象者が自宅を出てきた瞬間。
すぐに動き出したい気持ちを抑えて、あえてスマホを見ているふりをしたり、通行人を装って歩き出す。
尾行に気づかれないよう自然な距離感を保ち、電車に乗ったら隣の車両からさりげなく視線を送る。
こうした行動は、日常生活の中に“調査という非日常”を溶け込ませるための工夫です。
ある時、対象者がカフェに入っていったため、私も客を装って入店しました。
注文をし、スマホをいじりながら様子をうかがう。
しかし心の中では、対象者の表情、同席者との関係性、会話のトーンなどを瞬時に読み取り、次の動きに備えて思考を巡らせています。
つまり、外見上は「何気ない通行人」や「ただのカフェ客」でも、内心は極めて高い集中力を維持しているのです。
その一方で、予想外の動きにも冷静に対応する判断力が不可欠です。
対象者が急に走り出す、道を変える、振り返る——
そんな場面でパニックに陥れば、調査は失敗に終わります。
演技を保ちつつ、冷静な判断で次の一手を選ぶ冷静さが必要なのです。
調査員としての“顔を見せない演技”と、“判断を間違えない冷静さ”は、相反するようでいて実は表裏一体。
どちらかが欠ければ、現場では通用しません。
演技力と冷静さ——
そのバランスを保ち続けることが、調査成功の鍵であり、私たちの技術のひとつです。
前の記事へ
« 「決定的瞬間」は偶然ではなく準備の賜物次の記事へ
事務所選びで差がつく「その後の対応力」 »